30%の幸せ
メディアパル刊
これまで書いてきた短編小説のなかに「人びとシリーズ」と呼ばれるものがあります。二つの月刊雑誌に10年以上にわたって連載したので、その総数は 300篇を超え、ほとんどが単行本になり、文庫化もされました。しかし、その多くは現在、入手困難となっています。
この300篇から20篇を選びだし、ベスト・セレクションとして一冊にまとめよう、と本書は企画されました。
100篇にまで絞ったのは、IBC岩手放送の番組『ラジオ文庫』で「人びとシリーズ」を朗読してくださっている大塚富夫さんと吉田瑞穂さん、そして著者自身ですが、最終的な20篇へのセレクトは編集者の近藤恵美子さんとメディアパル編集部の諸氏による英断です。
いずれも懐かしいものばかりですが、まだまだ選んでもらいたかった作品がたくさんあります。それは、次のベスト・セレクションとして復活させたいと思っています。
『30%の幸せ』というタイトルの意味は「あとがき」に記してあります。

短編小説集 2008年2月29日発行
地の螢
徳間書店刊
既刊『北の駅』『大樹の下に』につづく岩井の町を舞台にした三部作が、ようやく完結。「問題小説」に連載中は『山河の賦』と題していたが、大幅に改稿して上梓するにあたり、『地の螢』と改題した。
大東亜戦争前夜、石炭の払底を補うため亜炭鉱山を開発しに岩井へやってきた男が主役だが、『北の駅』『大樹の下に』の主役たちも、重要な脇役として活躍する。
さらに、戦前に日本へ出稼ぎに来た朝鮮出身の鉱夫たちや、朝鮮から強制連行されてきた人びとが、岩井の炭鉱で必死に生き抜こうとした姿を描いている。それは実際にあったことで、著者の父親と著者自身が、すべてについての体験者であり目撃者でもある。
北の町と、小さな炭鉱で、ほのかな光を宿す[地の螢]のような人びとが、不安と混乱の時代を互いに支え合って生きてきた。
そのことを後世に伝えたくて書いた物語である。

長編小説 2007年12月31日発行
木々にさす光 リーリと真也のハートフル・ストーリー
PHP研究所刊
小学4~5年生から大人(ことに中高年の方々)まで、広い世代に読んでいただきたい本。筆者としては、自分の仕事の集大成のつもりで書きました。失意の男とその孫とが力を合わせて、失ったものを取り戻すまでの、小さな冒険と大きなロマンにあふれた物語です。

長編小説 2004年9月10日発行
魚の声
集英社刊
普通の人びとの生活のなかに潜む思いがけない秘密、消したい記憶、不思議な出来事を、「鳥の声」「祈る声」「風の声」「夢の声」「樹の声」「波の声」「山の声」「呼ぶ声」「闇の声」「魚の声」という10編の小説にして、この本に収録しました。
〔あの声が聞こえると、奇妙な出来事が起きる……〕
と、帯のキャッチフレーズには記してあります。
あまりに奇妙な話ばかりなので、長いあいだ単行本にまとめることができなかったという、曰く付きの作品集です。
さて、あなたは全部を無事に読み終えることができますかな?

短編小説集 2001年11月25日発行
朝の音
朝日新聞社刊
朝日新聞日曜版に連載した72編の掌編小説を収録。中高年の人びとを主に、若者や子供も含めて、私たちの身辺に暮らす市井の人びとの思いや心の揺らぎを、スナップ風に描きました。作者にとっては楽しい仕事でした。

掌編小説集 2001年12月15日発行